60億のイス取りゲーム

昨日、19日の月曜日に、NHK沸騰都市というドキュメンタリの第2回を放送していた。舞台はロンドン。左派リヴィングストン市長の下で、国外からの資本、労働力を貪欲に取り込み好況を博す街と、そこで活躍する各国のビジネスマン。そしてそれを 苦々しく思いながら働くロンドンっ子の日雇い労働者。


各種の視点を同時平行で追うツールとして、サッカー、プレミアリーグが利用されていた。ロシア人アブラモビッチの投資によって優勝を争うまでになったチェルシー。タイの元首相タクシンの資金で強化されるマンチェスター・シティチェルシーの躍進をスタジアムで見ながらはしゃぐのはロシア人のビジネスマンで、成功者の一人だ。オーナーがロシア人であるチームを眺めて「誇らしい事だ」と彼は言う。その一方で、古くからのチェルシーサポーターだった日雇い労働者はスタンフォード・ブリッジから閉め出され、パブで応援する日々。チケットはは高くて手に入らないのだ。


経済に活力を与えるためには、多くの資金が必要だ、というのはわかる。労働力もだ。資金と労働力の総和の増加を図るためにロンドンは、海外に目を付けた。諸外国の資金と労働力を積極的に受け入れる事で、ロンドンは成功を収めて来た。増えたお金はさらに次なる投資に使われ、移民労働者の成功と誘致政策が更なる労働力の流入に寄与する。


成功している裏では、日陰になる部分がある。経済が活性化するのはいい事かも知れないが、それによって競争が活性化すると、振り落とされる者が出てくる。番組内に登場した日雇い労働者も違和感を口にしていたし、何より、番組そのものが、先日の選挙の際、諸外国に開放的な政策を続けてきたリヴィングストン市長が落選した、という所で終わっていた。市民の選択は経済の活性化とは別の方向にあったのだ。


増田の内容も、その番組を見た後だけに興味深く感じられる所があった。もしかしたら、そんな流入政策を積極的に取るまでもなく、技術の進歩によって狭くなる世界では、いやが応にも競争相手の増加、多様化と、それによる競争激化を免れないのかも知れない。